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Onigiri 世界が注目する日本のソウルフード「おにぎり」の歴史と魅力

炊いたごはんを握っただけで手軽につくれる「おにぎり」は、日本のソウルフードであり、日本人の暮らしに欠かせない存在となっています。気軽に持ち歩ける便利さは、ランチや携行食にも向いており、日本独自のファストフードとして外国人観光客からの人気も高まっています。今回は、おにぎりの歴史や種類、栄養面での魅力、楽しみ方までご紹介します。

おにぎりの歴史とルーツ

おにぎりはいつから存在し、どのように食べられていたのでしょうか。まずは、日本におけるおにぎりの歴史とルーツをご紹介していきます。

おにぎりのルーツは弥生時代 太古の時代は神事に使われていた

おにぎりの歴史は太古の時代までさかのぼります。もっとも古い痕跡は弥生時代後期(紀元前後〜2世紀頃)とされ、石川県中能登町の遺構から三角形状とも解釈される炭化米塊が発見されています。いわば、「おにぎりの化石」です。

日本は稲作によって発展してきた国であり、お米は「神から授かったもの」として大切にされてきた背景があります。そのため、古代から神事や祭事などの供物として「おにぎり」が使われてきたと考えられています。

戦士の兵糧として重宝されたのち、行楽に携行するお弁当として活躍

貴族社会が誕生した西暦800年頃、平安時代になると、貴族たちが蒸したもち米を握り固めた、おにぎりの原型ともいわれる「屯食(とんじき)」を従者に振る舞っていました。昨今、欧米でも注目されている『源氏物語』の絵巻にもその様子が描かれています。

また、この頃から地方に派遣される武士たちが干飯(携行食)として持ち歩いたとされており、やがて武士が勢力を増していく鎌倉時代や戦国時代に突入すると、おにぎりは戦に向かう武士の兵糧として重宝されるようになりました。

おにぎりが現在のように身近な存在へと変化していったのは、徳川幕府によって天下泰平の世が築かれた江戸時代以降のこと。旅人がおにぎりを携行するようになり、浮世絵の大家・歌川広重による『東海道五十三次細見図会–藤沢–』には、旅の途中でおにぎりを食べて休憩する姿が描かれています。

さらに、近代化が進んでいく明治時代以降になると、家庭でもおにぎりをつくって行楽に持っていくようになりました。近年は、行楽・遠足などに携行するお弁当としてはもちろん、学校や職場などで日常的に食べるランチにも、おにぎりは大活躍しています。

おにぎりの定義

おにぎりは、炊いたお米を握ったものを指しますが、具体的にどんなものなのでしょうか。ここでは、おにぎりの定義をご紹介していきます。

おにぎりの形

おにぎりの形は、三角型、丸型、俵型、円盤型などがあり、昨今では、あえて握ることなくサンドイッチのような形状とした「おにぎらず」なども登場しています。地域によって、親しまれている形状は異なりますし、「おむすび」「握り飯」などと呼ばれることもあります。

特に、三角型のおにぎりは、海外の食品ではあまり見かけない形状をしているためか、そこに興味を惹かれる方も少なくないようです。

それぞれの特徴としては、三角型は「壊れにくく、持ち運びやすい」、丸型は「葉物などを入れた混ぜごはんや具材の多い炊き込みごはんなども形成しやすい」、俵型は「箸でも手でもとりやすく食べやすい」、円盤型は「味噌や醤油を塗って焼く“焼きおにぎり”などにしても火が通りやすい」といった点が挙げられます。

このように、目的に合わせた型で握ってみるのもいいでしょう。また、炊いたお米には、「まとまりやすく、どのような形にもできる」という長所があるので、握らずに型抜きなどを使ってさまざまな形状を楽しむ方法もあります。

おにぎりと海苔

おにぎりにといえば「海苔」。海苔を巻くことで、グルタミン酸やイノシン酸など、アミノ酸の旨味成分が豊富な海苔の風味をプラスし、お米の美味しさを引き立ててくれます。食べる直前に海苔を巻くことでパリパリとした食感も楽しめ、手にもごはんがつきにくくなります。フィンガーフードの感覚で手軽に食べられるため、行楽に持っていくランチなどにも向いています。

一方、海苔を巻かないおにぎりもあります。塩だけをつけたシンプルな塩むすび、それから具材をたっぷりと入れた混ぜごはん、炊き込みごはんなどは、海苔を巻かないことでその風味を直接味わうことができます。

ちなみに、おにぎりに海苔を巻く習慣が広く定着したのは戦後以降のことです。海苔の生活史が1949年にイギリスの藻類学者ドゥルー女史(キャサリン・メアリー・ドゥルー・ベーカー)によって明らかにされ、その知見を基に日本の研究者や生産者が養殖技術を大きく進展させました。1953年頃には安定的な養殖が可能となり、海苔が家庭に普及したことで、現在のようにおにぎりと海苔を組み合わせるスタイルが一般化しました。

おにぎりの具

おにぎりの具材には、どのようなものがあるのでしょうか。

[ツナマヨ]

外国人に特に人気が高いのは、「ツナマヨ」です。オイル漬けのツナ缶にマヨネーズを和えたもので、しっかりとした味わいを楽しめます。スパイシーな風味を好む場合は、一味唐辛子やカレー粉などを混ぜた「スパイシー・ツナマヨ」もおすすめです。昨今、海外でも注目されている「柚子胡椒」を加えるのもいいでしょう。

[梅干し]

日本人にとって定番となっている具材の一つが「梅干し」です。食塩で漬け込まれた梅干しは長期保存に向くうえ、抗菌性もあるためにごはんを傷みにくくさせる効果も期待できる食品なのです。また、日本では古くから、邪気を払って健康を願う魔除けとして梅干しを食べてきた風習もあります。

[鮭]

「鮭」もまた、川を遡る生命力の強さなどから縁起の良い食材とされ、祝い事などにも重宝されてきました。塩漬けにした鮭とごはんの相性の良さは素晴らしく、多くの日本人に好まれています。

[おかか]

さらに、家庭の定番となっている「おかか」は、鰹節と醤油などを和えるだけで手軽につくることができます。旨味成分が豊かな鰹節に、香ばしい醤油を組み合わせた日本らしい風味を楽しむことができます。

このほかにも、「たらこ」「辛子明太子」「いくら」など、魚卵を塩や唐辛子、醤油などで漬け込んだ具材や、ひき肉を甘辛く炒めた「肉そぼろ」、豚肉の薄切りを炒めて巻いた「肉巻き」、海老の天ぷらや唐揚げなどの揚げ物を具材とするものもあります。

白いごはんを握るだけのおにぎりには、どのような具材とも相性が良く、さまざまなアレンジを加えることができるのです。

おにぎりの栄養と体にうれしい魅力

おにぎりは、美味しいだけでなく、体にうれしいポイントがたくさんあります。お米には炭水化物だけでなく、たんぱく質やビタミン、ミネラルを含み、具材や海藻と組み合わせることでバランスの良い食事になります。水分量が多いため腹持ちが良く、間食を減らしやすいのも特徴です。また、グルテンを含まないため、小麦を控えたい人にも取り入れやすい主食です。おにぎりは、手軽で美味しく、健康にもやさしい日本ならではの食文化なのです。

日本産米を使っておにぎりにチャレンジ

おにぎりは「日本料理の中で、もっとも自由度が高い料理」といえるでしょう。ごはんとお好みの具材を組み合わせ、手軽につくることができるおにぎりは、海外の方でも比較的調理しやすいレシピです。炊飯が難しい場合は、温めるだけでいいパックごはんを使うこともできます。「日本料理にチャレンジしてみたい」という方の入門編としても、おにぎりはおすすめです。

ただし、おにぎりは日本産のお米でつくることがポイント。粘り気がある日本のお米だからこそ、自由自在に形をつくることができますし、日本のお米ならではの旨味と甘みがあってこそ、おにぎりの美味しさを味わうことができるのです。また、自分で炊く場合には、日本のお米が持つ味わいを引き出すために、軟水を使うことをおすすめします。

※参考

「ごはんの炊き方」
https://myjapanrice.com/howtocook/

「おにぎりの握り方」
https://myjapanrice.com/recipe/onigiri/

国境を越えて自分風にアレンジできるおにぎり

おにぎりは、形も具材も自由自在に楽しめるため、多様性に富む料理といえます。日本の代表的な料理である寿司とは違い、おにぎりには難しい技術は必要ありませんし、酢飯のような強い味はしないため、どのような食材とも親和性が高いのです。

日本の具材だけでなく、自分たちの国の食文化を活かしてアレンジをすることで、国境を越えた自分風のローカルフードを生み出すこともでき、目新しいパーティーフードとして活躍してくれるでしょう。

例えば、海苔の代わりに生ハムやレタスを巻くこともできますし、チキンと黒オリーブのみじん切りやハーブ野菜などを混ぜて、ピンクペッパーや粉チーズなどを振りかければ、彩りも華やかになります。小さめに握ってピンチョスのような前菜でもてなすこともできますし、みんなで一緒におしゃべりしながらつくり、食べ比べなどもしてみることで、おにぎりを通じたコミュニケーションまで楽しめるでしょう。

新しいマリアージュを体験し、世界で唯一の自分風の味わいをつくる。おにぎりには、そんな美味しさと楽しさを味わえる魅力があります。

監修:中村祐介氏

一般社団法人おにぎり協会 代表理事

おにぎりは、海藻や魚介などの「海の食材」と、米や山菜といった「山の食材」が一つに結びつくことで成立した、日本特有の食文化です。素材の組み合わせが無限に広がる点で、寿司と同様に多様性と発展性を備えており、世界の食習慣に適応しやすい柔軟さがあります。また、調理技術をほとんど必要とせず、主食を手軽に携行できる構造は、日本の生活様式が生み出した実用的な知恵ともいえます。

近年は、各国の食材を組み合わせた新しいスタイルのおにぎりも登場し、国境を越えたローカルフードとしての可能性が広がっています。日本人の生活史の中で長く親しまれてきたこの小さな料理は、いま世界が再発見しつつある日本の食文化の象徴でもあります。

Website: https://www.onigiri.or.jp/about-us

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