美味しさと面白さを追求。
目も舌も楽しませる“イノベーティブな食体験”を
丸の内のメンストリート・丸の内仲通り沿いに路面店を構える「テクストゥーラ(TexturA)」は、“新しい食体験”を提供するイノベーティブなフュージョン・レストラン。本格中華料理と本格スペイン料理の技法をベースに、目も舌も楽しませる斬新な料理を提供しています。
煌めくシャンデリアに照らされたハイカウンターが目を引くラグジュアリーな店内は、2つのエリアに分かれています。大きな窓から通りを望むことができるカジュアルダイニングエリア、そして、ヘリンボーンの絨毯を敷き詰めた大空間にゆったりとテーブル席を配置したハイエンド レストランエリアがあり、気軽な食事から大切な人と過ごす記念日まで、シーンに合わせた楽しみ方ができます。
新崎さんは、オープン当初からスペイン料理担当のシェフを務めてきましたが、現在は料理長に就任。新しい食材を積極的に取り入れ、スペイン料理と中華料理の技法を用いて完成させたオリジナリティ溢れる料理には、盛り付けや食べ方まで楽しませる工夫が凝らされています。「美味しさと面白さを追求することを目指している」という新崎さんは、面白い食材や珍しい食材を日々探し、気になる食材を見つけたら産地の生産者を直接訪ねています。また、和食やフレンチなど多様なジャンルの料理人とのつながりを活かして情報交換を行い、ヨーロッパの野菜を研究する会にも参加しているうちに、社内の産地訪問研修まで手がけるようになりました」とのこと。
また、「海外品種の野菜をはじめ、新しい食材の探求を日々続けていますが、お米は日本産米にこだわっています。お米そのものに甘みと旨味がしっかりとある日本産米は、どのように調理しても美味しく、そのまま食べても美味しい」と話す新崎さん。イノベーティブな料理の追求には、それをしっかりと支えてくれる日本産のお米が欠かせないようです。


美味しいものを作って喜んでもらえる。
子どもの頃から夢は“料理人”だった
子どもの頃から母の料理の手伝いをするのが好きで、そのうち、父の朝食のスクランブルエッグを任せてもらい、“料理長”なんて呼ばれていましたね。料理には、“作る楽しさ”と“食べてもらう楽しさ”があることをその頃から実感していました。
料理人になる夢を抱いたのも小学生の頃です。料理人が腕を競い合う番組を見て、すごい技術を持つ匠たちの姿に憧れ、「自分もカッコいい料理人になりたい」と思いました。それに、美味しいものを作って喜んでもらえる仕事なんて、自分にとっては遊び続けているようなものですから、最高に楽しいだろう、と。
高校を卒業した後は、調理師を養成する専門学校に進み、フレンチやイタリアンなどの技術を学びました。その後、老舗西洋料理店「小川軒」で5年間修行を積み、フレンチのコース料理における各ポジションを経験。一通りの技術が身に付いた頃、「フレンチとはまた違う世界も見てみたい」と考えました。振り返れば、専門学校時代に研修旅行でフランス、イタリア、スペインを回ったとき、格式張らずフレンドリーに接してくれたスペインの土地柄が最も自分に合っていました。そこで、2013年に「TexturA」の運営会社である株式会社ウェイブズに入社し、東京・田町のスペインバル「モンリコ」で本格的な修行を積むことにしたのです。

新しい食材から斬新な料理を発想。
常に「新鮮な驚きと楽しさ」を提供していく
入社3年が経つ頃には、スペインバル「モンリコ」のシェフとなり、その後、さまざまな店で経験を積んでいきました。料理人としての意識が大きく変化したのは、社内留学制度を利用して、スペインの1つ星レストラン「エル・ドンセル」で1ヶ月間の現地研修を受けたときのことです。
このレストランでは「常に考え、常に改善・向上を目指す」を基本理念として持っていて、キッチンの随所に閃いたアイデアをすぐに書き込むための黒板が設置されていました。盛り付け一つでも、もっと良いものにできるならどんどん変えていこうというスタンスがあり、日々変化し続けていく様子を目の当たりにし、衝撃を受けたのです。この研修は毎年実施されていますが、参加したメンバーの話を聞くと、常に変化し、進化し続けていることがわかるので、本場スペインのシェフに負けてはいられないと思いました。
2019年、「TexturA」のスペイン料理担当シェフに就任し、その後、料理長として全ての料理を任されていますが、スペイン現地で学んだ姿勢と共に、遊び心ある発想力を大切にし、「常に新鮮な驚きと楽しさを提供し続けること」を目指しています。
さまざまな角度からアンテナを張り、季節に合わせた面白い食材や珍しい食材を探し続けていますし、ただ美味しく料理するだけでは終わらせません。「スペイン料理と中華料理の技法を用いて、その食材をどう面白く料理し、いかに斬新なものとするのか」「どんな盛り付けなら驚きを持って楽しんでいただけるのか」を常に考え続けています。
人気の冷菜「皮蛋(ピータン)豆腐~エスプーマ仕立て~」は、中国産の皮蛋をジュレ状にしたものと、マイクロハーブや細かく刻んだ季節の野菜、ケッパーをレモン汁とオリーブオイルで和えたものを滑らかな豆腐に合わせています。卵黄のソースを敷き、豆乳ベースのエスプーマ(泡)をふんわりと載せることで、目にも舌にも新しい味わいが完成しました。また、新しい食材としてキュウリの食用花を用いたことで、華やかさを演出すると同時に、「ただの飾りだと思ったら、キュウリの風味がする!」という新鮮な驚きも味わっていただく工夫も凝らしました。
当店では、3ヶ月ごとにコースメニューを変更していますが、入れ替えの際にはブラッシュアップさせるポイントを探すために再度試作しています。僕はソムリエの資格も持っているので、ワインとのペアリングも踏まえながら検証・検討を行っています。使う食材や調味料までベストなものを追求し、さらなる進化を遂げていくことを目指しています。

お米が主役の料理においても、
おかずを支える名脇役としても
日本産米は欠かせない
スペイン料理において、お米はとても重要です。何しろ、パエリアの専門店だけでも数多くあるほどですから。スペイン産のボンバ米は、粒が大きく淡白な味わいで、ダシの旨味を吸いやすいという特性があり、確かにパエリアには向いているでしょう。
けれど、僕はこだわりを持って日本産のお米を使い続けています。当店では、スペイン料理ならパエリアやメロッソ(雑炊のようなお米料理)、中華料理ならチャーハンや麻婆豆腐に合わせる白ご飯など、幅広いメニューを提供しているので、多様な手法で調理しても、そのまま食べても美味しいお米であることが重要なのです。
北海道産の“ななつぼし”品種は、さっぱりしていながらも甘みと旨味がある味わい深さで、まさに理想的なお米だと感じます。例えば、野菜や魚介と一緒に炊いてダシを吸わせたり、具材と一緒に炒めたりしたとき、お米本来が持つ旨味にさらに味が乗って美味しくなる。ですから、お米が主役の料理には絶対にななつぼし品種を使いたいと思っています。
それに、日本産のお米はそのまま食べても美味しいので、メインとなるおかずと一緒に食べるときには、その味わいをより一層引き立てる名脇役になってくれるのです。常に斬新な料理を提案していくためにも、美味しいものを組み合わせて提供していくためにも、日本のお米はなくてはならないものだと感じます。

日本産米の甘みと旨味を味わうコツは
「研ぎすぎないこと」「鍋で炊くこと」
僕はお米が大好きなので自宅でもよくお米を炊きますが、美味しく食べるための一つ目のコツは、「研ぎすぎないこと」ですね。日本産のお米は精米技術も高いため、軽く洗う程度でOKですし、研ぎすぎないほうが旨味をしっかり残すことができます。また、日本では当たり前のようにしていることですが、30分程度、水に浸けて吸水させるのも大事です。そうすることで、ふっくらと炊き上がりますから。
これに加えてもう一つ大事なコツは、炊飯器ではなく、「鍋で炊くこと」です。ガスを使って強火で炊くことによってお米が対流し、炊き上がったときの粒立ちをしっかりとさせることができます。直火で使える壺ならより対流しやすく、さらに美味しく炊けると思うので、もしもお持ちなら壺炊きにチャレンジしてみるのもおすすめです。炊き上がった後は、15分程度は蓋を開けずにそのまま置いておきましょう。蒸らすことで全体の熱が落ち着き、ふっくらもっちりと炊き上げることができます。
また、シェフとしてパエリアを作るときには、最初にお米を炒めて水分を飛ばしています。飛ばした分だけダシ汁を吸ってくれるので、お米に味をしっかりと乗せることができますよ。それから、野菜や魚介などの具材をお米の粒の大きさと揃えて刻むこともポイントです。具材の旨味をより吸いやすくなり、お米の美味しさが引き立ちます。
一方、チャーハンを作る場合は、最後にほんの少しだけ水を加えています。具材と一緒に炒めるうちにお米はパサパサになりがちですが、仕上げに水分を軽く纏わせてあげることで、ふんわりとした食感になりますね。

お好みの食材を入れる“おにぎり“なら、
ピンチョス感覚でお米の美味しさを味わえる
日本人にとってのお米は、一つの食材ではなく、“主食”です。誰でも朝・昼・晩のうち、少なくとも1食はお米を食べているのではないかと思いますし、僕自身、賄いでも自宅でもよくお米を食べています。
海外ではサラダ感覚でお米を食べる傾向もありますし、お米はあくまで料理に使う食材として捉えられているように感じます。しかし、日本産のお米はそのまま食べてもとても美味しい。だからこそ、日本には「料理と白米を組み合わせる」という独特の食習慣があると言えるのかもしれません。まだ味わったことのない方には、ぜひとも体験していただきたいと思っています。
僕のおすすめの食べ方は、“おにぎり”です。先日、スペインから招聘したシェフにおにぎりをお出ししたところ、「ジャパニーズ・ピンチョスだ」と言って、とても喜んでくれました。スペインのおつまみであるピンチョスは、一口サイズのパンに食材を載せて串を刺す簡単な料理ですが、おにぎりもお好みの食材を入れて、さっと握るだけの手軽さで、お米とのハーモニーを楽しむことができます。腹持ちもいいのでランチなどに持っていくのもいいかもしれませんね。
とてもシンプルな料理なので、それこそシンプルに日本のお米の美味しさを味わっていただけるのではないかと思います。

Recommended dish
Century egg tofu with espuma 「皮蛋豆腐~エスプーマ仕立て~」
中華料理の中でも非常にシンプルで人気のある前菜「皮蛋豆腐」に、スペイン料理の手法を用いて、あえて盛り付けも洋風仕立てに。オリーブオイルとレモン汁で、細かく刻んだ水茄子、搾菜、キュウリ、ケッパーをラビゴットソース風に仕上げ、石川県産のマイクロハーブで柔らかな香りを添えた。滑らかな豆腐とシャキッとした薬味の食感が口の中で複雑なリズム感を生み出し、洋と中華の融合を見事に表現した。

Recommended dish
Chinjao Rosu (stir-fried beef and green pepper) 「青椒肉絲(チンジャオロース)」
中華料理の定番料理に独自のアレンジを効かせ、フレンチのメインディッシュのような洋盛り付けに。宮崎県産のインパクトの強い幅広のメンマとスペイン産のピキージョ(ナバラ地方原産の小ぶりな赤ピーマン)を使用。ローストビーフのように歯応えのある黒毛和牛に、黒胡椒とフォン・ド・ヴォーのエスプーマ(泡)を合わせ、フォークとナイフで食す新感覚の一皿に。


